スマトラ沖地震に見る、人、物、金、情報の移動

ニュース・評論
年末の締め括りとして、一稿を加えようと「人身取引」問題に関して加筆していた時に、付けっ放しにしていたTVのCNNチャンネルからスマトラ沖地震のニュースが入ってきた。初めのうちは、04年は自然災害の多い年だったなと思いながらキーボーを打ち続けていたのだが、続報に津波の報道が入ってくるや、その災害の規模の大きさだけでなくインド洋沿岸全域に渡って被害が拡大しているのに驚かされた。
BLOGへの投稿はいったん中断、それからの数時間、いや数日は地震、津波のニュースに釘付けと成ってしまった。各被災地へのアクセスが困難を極め、被災の状況も各ニュース・ソースによって異なっていたが、年を明けて、各国の支援の輪が広がるにしたがって、その被災の実態も明らかになり、死亡・行方不明者を加えると沿岸13国で15万人を超え、被災者は500万人を下らないという。励ましの言葉すら容易には見当たらないほどの未曽有の災害である。真にお気の毒としか言いようがない。

この災害の報道のなかで私の目を引き付けたものがある。日本の報道では先ず日本人の安否の確認であるが、現在までに確認された死亡者の数は23人、外務省に安否の問い合わせのあった3,315人のうち安否未確認は247人(1月6日(夜)外務省発表)となっている。各国ともに自国民の安否に関しての報道を取り扱っているが、そのなかでスウェーデンは12月末に自国民の被災者の数が1000人を超える可能性があると報道していた。そして現在では安否未確認の数は1500人を超えている。被災地から日本より遠く、日本の人口の1割弱(約900万人)のスウェーデンの安否未確認の数が日本より遥かに多い。人口を基に比例計算すると約2万人の日本人が安否未確認となっているのと同じである。何と大きな数だろう。被災地から届く映像にも西欧人と思しき多くの白人の姿が映っている。被災地のタイ、プーケットは日本でも人気の観光とでもある。世界各国からの旅行者もさぞ多かったのだろう。
冬季のスウェーデンでは日照時間が7~8時間と極めて少ない、南洋の輝く太陽は北欧の人達の憧れに違いない。自然条件が人の国際移動に大きく影響していることを改めて知らされた。否、もとはと言えば、人類は有史前より生存に適する自然条件をもとめて移動してきたのだ。それが文明、文化の発展によって自然条件を克服し定住するようになり、近代国家の成立に繋がった。私の視点「人、物、金、情報の移動、そして分裂と融合」から自然という要素が欠けていただけなのだ.
今年も、BLOGのタイトルを「人、物、金、情報の移動、そして分裂と融合」にすることに決めた。“自然”も視点に加えて・・・・・・。
人類の歴史は、人の移動から始まった、生命の維持と子孫の存続の為に。それが、他の氏族や共同体の“物”を収奪するに及んで争いが生じ、戦へと発展し“分裂”を生んだ。一方、平和な手段で互いが必要とする“物”を交換、交易することが共同体や民族の“融合”を促進した。そして交易を円滑にする手段として“金”が生れた。“物”の移動に伴って“金”が移動し、より豊な“物”を求めての民族の大移動とともに侵略、征服、分裂、融合を繰り返し、現代民族国家の現出へと導いた。 しかし、国家という個人を超越した権力が生れると人、物、金の移動は統制を受ける事と成ったが、“情報”は統制の隙間をぬって人々の間を行き交う。誤った情報に触発されて起きた史上最大の“分裂”が第2次世界大戦であろう。大戦後に人類最大の分裂を教訓にして“融合”へと導こうとして生れたのが国連であったはずだ。しかしそれも、分裂の危機を内に抱えている。
人類の歴史は、“物と金”を廻っての離合集散、分裂と融合の歴史といっても過言でないかもしれない。急速に発達した情報伝達技術が一般化した今日、従来の人→物→金→情報の流れの順序が情報→金→物→人と時空間を移動するスピードの順に変わってしまった。情報を征するものが富を握ると云われるよう、大戦後まもなく世界に広がる家系のネットワークを利用して巨額の富を構築したロスチャイルド家に代表されるユダヤ資本、近年では、アジア通貨危機の元凶といわれる国際的投機資金の存在が例にあげられる。パーソナルコンピューターとインターネットの普及によって多くの人達が家に居ながらリアルタイムで情報を発信、受信できる時代となったが、その情報の扱いを間違えると第二次大戦以上の分裂を生む危険性も含んでいる。

さて、スマトラ沖地震と津波での「人、物、金、情報」だが、やはり、いち早く被災の情報が世界に伝えられ、そして各国から市民レベルの義捐金や政府レベルでの復興支援金の提供が相次ぎ、救援物資も現地に続々と到着しつつある。また、人の面でも被災者の治療や2次災害対策の為の医療班はじめ被災者捜索および復旧に向けた各国の救援隊も加わり、国際的な支援の輪が広がりつつある。人間社会に甚大な破壊をもたらした自然災害だが、支援にあつまる人、物、金、情報が被災国にあった分裂の危機を“融合”に向かわせる大きな力と成っている事に災いの中での光明を見た思いがした。
しかし、一方で、スウェーデン政府が安否未確認者に関する情報の公開を、留守宅を荒らす犯罪の誘発を招く事を案じて躊躇っている。ユネスは被災孤児が「人身取引」の対象に成らぬように警告を発している。更に、アメリカのパウエル国務長官が国際的救援の管理・指揮を円滑に進めるため、アメリカ、日本、オーストラリア、インドによる救援・復興コア・センターの設置を提唱したが、特定国の主導を嫌う国々などの反対で最終的には国連の主導の下で行うことに成った。このように“融合”の流れを乱すような人の動きもあり、災害に拘わる情報に対して監視の眼を緩める事は出来ない。
怒りを向ける対象のない自然災害のような場合、人は“融合”へと向かうが、人災の最たる戦争のように怒りの対象が人間の場合には“分裂”が分裂の連鎖を生み、人間同士の憎悪を増幅させる。人、物、金、情報の移動が文化・宗教・価値観の融合をもたらし平和な世界へと向かうことを願うばかりである。
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by jpaccess | 2005-01-10 11:42 | 時事ニュース
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