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「パブリックコメントと情報公開法」は公正且つ適正に運営されているか

新潟地震での災害、イラクへの自衛隊派派遣の延長、北朝鮮拉致問題、更には中国潜水艦の領海侵犯など、国内外に関わる重大なニュースに目を奪われていたところに、矢継ぎ早に公表された「日比FTAでフィリピン人看護師、介護士の受け入れ合意」「フィリピン人エンターテナーの入国制限」を日本政府が決定したとする報がフィリピンのメディアに大々的に取り上げられて驚かされた。
海外に在住する者として「浦島太郎」に成らぬよう、インターネットで日本の全国紙には必ず目を通すのを日課としているが、まさかこんなに急遽決定されるとは思っていなかったからである。
フィリピンの一般の人達は、国内に十分な収入をもたらす仕事がない国情である為、外資導入や貿易などの事柄以上に海外労働に対する関心の方が高く、日本への想いも我々の想像を超える。
フィリピン人の知人からは度々「自分の娘が看護婦学校に行っているが卒業したら日本では働けるだろうか」とか「今までエンターテナーとして日本で働けたのが、来年から出来ないと聞くが本当か」等の質問を受ける。その度に国の制度や法律はそう突然に変わることは無いから来年からという事は無いだろう、と答えてきた。
ところが、日本での報道記事を見ると私の予想は全く覆されてしまった。
特に、「共同ニュースによると、日本政府はフィリピン人に発給していた興業ビザの数を年間8万から8,000へ減らす計画で、これを政府の人身取引対策のための行動計画に盛り込むという(Inquirer)」や介護士、看護師の件でも「来年度より各100名を限度として」との記事を読んで、現実に確定したのかと思ってしまった。それにしては、あまり性急且つ具体性に欠けた政府施策なので、本誌はもとより他のウェブサイトなどへ自分の意見を投稿し始めた。

投稿に当たり、先ず本誌の「行政への一言、パブリック・コメント」を開いたところ、法務省の入管法の一部改正に関するパブリック・コメントの項が「入管法を犯して外国人女性風俗店で働いている大きな要因は・・・・外国の公的機関が発行した資格証明書を規定した一項目を現行法より削除する」平成16年12月3日(日)~17年1月4日(火)までの意見募集となっている。また、介護、看護師に関しては、FTAの合意事項の内容が明らかになるにつれ、読売新聞(12月2日付け社説)「日本の国家資格取得などの条件付きで看護師、介護士の受け入れは決まったが肝心の受け入れ人数は、両国の溝が埋まらず、先送りされた」のように他のメディアの取り扱いもかなりトーンダウンした表現となった。
やはり私の予想通り法律の施行には未だ時間を要すると一人納得していたのだが、ここにきてフィリピン人エンターテナーを招聘しているプロモーターやその組織の代表等が大挙してマニラに集まり、連日のように現地の派遣事業者と会合を持ち、其れを現地メディアが追うなど騒然と成ってきている。来週には、フィリピンの業界団体の一部が日本大使館に請願デモを行うとの報もある。日本の入管が来年年明けからフィリピン政府の資格証明では興行の申請を受けつけない事を請願の根拠としている。
長年海外生活しているうちに「浦島太郎」に成ってしまったかと自分の予測に自信を失い、法律の改正や成立にはどのようなプロセスを辿るのか調べてみた。
先ず、総務省のHPを調べたら「パブリック・コメントの手続きとは、行政機関が政策の立案や新たな規制を設けたり、又は改正・廃止したりする際に国民の意見や情報を提出する機会を設けなければならない。平成11年3月23日閣議決定、翌4月から実施(要約)」と記されている。この記述からすると、パブリック・コメントとは行政機関に義務付けられた国の制度のようだ。寄せられた意見に拘束力はないが、行政に出来るだけ民意を反映させる為の施策である。前述の入管法改正で示されているように意見募集の期間は最低1ヶ月なのだろうか。
仮に1ヶ月だとしても寄せられたコメントの分析、所管省庁での法文の素案作成、そして立法府での審査を受け施行となるのであれば、法律の改正・施行には意見募集開始から最短3ヶ月程度は掛かるのではないだろうか。
再び自分の予測に意を強くしていたところへ、今度は12月7日に「フィリピンに入国厳格化を通知、人身取引対策の計画が閣議決定された」との情報がTVやインターネットを通して入って来た。さて、閣議決定とは何か、法律との関係は・・・・又もインターネットで検索、有りました内閣法制局のホームページに。「内閣が提出する法律案は所管の関連省庁での法律案の原案作成、内閣法制局での審査、国会提出のための閣議決定、衆参両議院での可決、法律の成立、天皇への奏上、法律の施行となっています。この点からしても法律の施行は一朝一夕のことではない。
 情報公開法も調べてみた。公正で民主的な行政運営を実現する為に、各省庁に文書閲覧窓口を設け、情報公開を図ることを目的に「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」として平成11年5月7日に成立している。確かに、各省庁のホームページを見ると、行政文書の閲覧窓口の設置案内を掲載している、パブリック・コメントも意見募集だけでなく、集計結果も公開している。
すると、マニラで繰り広げられている騒然とした現象は、明日にでも新しい制度へ移行するとの印象を与えたメディアの報道姿勢に問題があるのかもしれない。また、日本側の民間団体が日本語や文化、行政機構などの知識に欠けるフィリピン人を相手に自らの利害を計算して、必要以上に危機感を煽り、偽った情報を流した結果で有るのかもしれない。
情報化の時代、様々な情報が国境を超えて一日の内に世界を駆け巡る時代となった。情報公開での行政の対応やマスメディアの報道のあり方には益々大きな責任が課せられてきている。特に、外交に関わる問題に関しては、英文併記をもっと多用するなどして外国人から誤解を招かぬようにする努力や外国の新聞で見られる掲載記事の執筆者の氏名掲載など採れる手段は色々有ると思う。少なくとも情報の受け手は、出し手に比べその情報に関する専門的知識の点では劣るのが一般的である。その劣る人々へ公正な理解の促進を図ることが情報公開の精神であろうし、またマスメディアの重要な役割と責任であると思う。

何れにせよ、フィリピンは、今年イラク戦争で反政府勢力に拉致されたトラック運転手の救済の為に自国の派遣軍を撤退させ、それを契機にイラクへの海外労働者の派遣も禁止された。数年前にはシンガポールで雇用者から被害を受けたメードの裁判の判決が不等であるとして大衆抗議行動が起きて一時は通商の断絶にまで発展しかねない状況となった。
この度の「介護士問題」「入管法改正に関わる問題」が誤った情報により長年築き上げてきた両国の相互信頼の基礎を揺るがすような結果にならぬことを祈る。
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by jpaccess | 2004-12-13 21:07 | 政治